このページでは、USCPA試験の合格率について解説しています。
世間一般的にはアメリカ人を含めた全体の合格率で語られてしまいがちですが、試験の難易度を正確に知るためには、日本人の合格率に絞って考えることが大切です。
このページでは、アメリカ人受験生を含む全世界の合格率と、日本人受験生の合格率に分けて解説しています。
是非、受験を検討する上での参考していただければと思います。
以下のページについても、合わせてご覧ください。
>>USCPA(米国公認会計士)とは?USCPAに関する基本情報総まとめ!
>>USCPAの日本人受験者数と合格者数について
USCPA試験の全世界合格率
それでは、USCPA試験の全世界合格率と日本人合格率をそれぞれ紹介していきます。
まずは、アメリカ人受験生を含む全体の合格率です。
巷で一般的に言われているUSCPA試験の合格率は、この全世界での合格率を指していることが多いかと思います。
2017年度試験の全世界での合格率で、AICPAウェブサイトからの引用です。
2017年度 全世界での合格率
FAR 44.42%
BEC 52.99%
REG 47.24%
AUD 48.59%
割と高い合格率ですね。
結構簡単な試験なんだな、と思われる人が多いかもしれません。
各専門学校もこれらの合格率を自社のウェブサイトで紹介し、簡単な試験であることをアピールして受講生を集めています。
しかし、この合格率には隠された数字のマジックが2つあるので、留意しておく必要があります。
ひとつは全世界での合格率であること、もうひとつはあくまで科目合格の合格率であることです。
まずひとつは全世界での合格率であることです。
受験生の9割以上はアメリカ人であり、日本人受験生は1割にすら届きません。
年間約10万人の受験者数のうち、日本人受験者は約2,000人です。2%程度ですね。
実は、NASBAのウェブサイトにて国別の受験生の合格率も公開されていますので、こちらを見ていきましょう。
USCPA試験の日本人合格率
NASBAのウェブサイトで紹介されている日本人受験生の各科目の合格率は30%程度です。
BECやAUDに至っては、20%台という有り様です。
以下、少し古いデータですがNASBAウェブサイトからの日本人合格率の引用です。
2014年度 日本人の合格率
FAR 38.4%
BEC 28.1%
REG 28.6%
AUD 36.4%
日本人受験者の合格率は全世界平均の合格率を大きく下回っています。
なんと、アメリカ人受験者よりも20%近くも合格率が低い結果となっています。
衝撃の事実ですね。
ある程度互角にアメリカ人と戦えているのはFARくらいでしょうか。
BECについては、アメリカ人受験生の間では最も簡単な科目と言われています。
しかし、日本人受験者はWC問題(Written Communication)の英文論述問題で大きく失点していると推測されます。
WC問題は15%の配点ですが、ここで大きな差が付くことになりますので、試験対策上はWC問題を捨てることなくしっかりと部分点を確保していきたいところです。
AUDについては、単純に英語力の差と思われます。
AUDは計算問題の占める比率が小さく、文章を読んで文章で答える形式の問題が多くを占めます。
英語の読解力が低い日本人にとっては、膨大な文章量を前にして、試験時間が若干足りなくなる傾向がありますので、合格率を押し下げているものと思われます。
日本の公認会計士や税理士は、受験料が安く、受験要件も易しいことから、俗に言う記念受験も多いと言われています。
その一方で、USCPAは受験料が高く、受験要件も厳しいことから、実質的な競争率は非常に高いです。
米国であればM&A取得後に受験する人が多いようですし、日本会場においては公認会計士の有資格者も多く受験しています。
このようにUSCPA試験は総じてスペックの高い層が受験していますので、レベルの高い母集団の中で合格を勝ち取る必要があります。
全科目合格者の比率
上述した通り、公表されている数値はあくまで科目合格の合格率です。
USCPA試験においては、科目合格の有効期限は18ヶ月であり、この期限を超えると科目合格が失効してしまいますので、これを無視しては語れません。
科目合格を失効することなく、実際に4科目合格まで辿り着く受験生は、全体の何%程度でしょうか。
正式なソースは存在しないので、あくまで単純計算での推測になりますが、ちょっと試算してみましょう。
各科目の合格率を30%と仮定し、1つのクォーターに1科目ずつ受験し続けた場合、1科目目を合格したのち、残り18ヶ月(6クォーター)の有効期限内に残り3科目を合格できる確率は、概ね25%となります。
たとえ1年半かけて真面目に勉強を続けても、それ以外の75%の人については、4科目が揃う前に1科目目の科目合格が失効してしまうという計算になります。
また、全ての科目をストレートで合格する確率は、単純計算ですが30%の4乗で、約0.8%の狭き門となります。
実際にはここまで割合が低いということは無いかと思いますが、いずれにしても全科目一発合格は非常に難易度が高いということは事実かと思います。
と、だいぶ脅しをかけましたが、しっかりと対策すれば問題なく合格することができる試験ではあります。
しかし上でも述べたとおり、母集団のレベルが高いことも踏まえると、世間で言われている合格率よりもなかなか厳しい戦いになることを理解しておいてください。
USCPA試験の国別合格率ランキング
日本だけでなく、その他の国々の合格率についても見ていきましょう。
NASBAが取り纏めた2014年度の受験者データを参考に、アメリカ+受験者数の多い30ヶ国に絞って、各国の科目合格率を集計してみました。
https://media.nasba.org/files/2017/01/2014JurisdictionBookNASBAWebsite.pdf
受験者の母集団が小さい国(受験者数10位未満)は、順位がブレる傾向にありますので、細字にしています。
受験者の母集団が大きい国(受験者数10位以上)は、ブレも少なく、ある程度信頼できる数値になるかと思いますので、青太字にしています。
1位 ブラジル 65.6%
2位 イスラエル 62.3%
3位 ドイツ 53.3%
4位 アメリカ 50.6%
5位 イギリス 50.0%
6位 レバノン 49.9%
7位 カナダ 47.9%
8位 中国 46.3%
9位 オーストラリア 45.6%
10位 エジプト 45.4%
11位 オマーン 45.3%
12位 シンガポール 44.4%
13位 韓国 44.1%
14位 カタール 42.5%
15位 ヨルダン 41.9%
16位 カザフスタン 41.7%
17位 パレスチナ 41.5%
18位 キュラソー島 41.3%
19位 台湾 40.3%
20位 クウェート 40.1%
21位 アラブ首長国連邦 39.1%
22位 サウジアラビア 38.5%
23位 香港 38.3%
24位 バミューダ諸島 35.1%
25位 インド 34.9%
26位 ロシア 33.7%
27位 日本 32.8%
28位 バーレーン 29.9%
29位 バハマ 29.0%
30位 ジャマイカ 20.1%
31位 ケイマン諸島 19.7%
以上です。
第1位のブラジルの受験者数は18人、第2位のイスラエルの受験者数は23人と、母集団が小さいため、あまり参考にはならないかもしれません。
数値が信頼できそうな母集団が大きい国、つまり受験者数トップテンの太字の国々だけ抜き出すと、
アメリカ、カナダ、中国、エジプト、韓国、台湾、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、インド、日本
の順となります。
非英語圏であれば、中国やエジプトが非常に良い成績を残しているようですね。
一方で、日本人の合格率が異常に低いことに驚いた人も多いのではないでしょうか。
母集団が小さい国が多いためにバラつきはあるものの、全体的な傾向としては、
欧米諸国>東アジア諸国≒中東諸国>カリブ海沿岸諸国
というような構図になるかと思います。
日本人の合格率が異常に低い理由
世界各国の受験生の中では日本人の合格率が非常に低い結果になっています。
特にBECのWC問題(Written Communication)が目立って出来が悪いのですが、BECに限らず、他の科目も総じて合格率が低い傾向にあります。
中国、台湾、韓国といったアジア各国にも、中東各国にも負けてしまっています。
一般的に、日本人は計算力も文章読解力も世界トップクラスと言われており、平均IQもアメリカ人よりも高いはずです。
それなのに、なぜこのような結果になってしまうのでしょうか。
会計知識の問題?
日本人は、会計知識が乏しい受験者が多く受験しているのでしょうか?
確かに、アメリカではMBA取得後の学生がUSCPAを受験するケースが多く、受験者のレベルは高いかもしれません。
しかし、日本人受験者もこの点は負けていないはずです。
日本人受験者平均年齢は非常に高く、日本の公認会計士等、会計知識がかなり豊富な層が受験しています。
台湾や中国の受験者は若い女性が中心ですので、これらの国と比べても、日本人受験者の方が会計のプロフェッショナルは多いはずです。
ですので、USCPA試験を受験する層の問題ではないようですね。
英語力の問題?
会計知識の問題ではないとすると、英語力の問題でしょうか?
参考までに、TOEFLスコアの国別ランキングを見てみましょう。
以下の14~15ページに国別の平均スコアが載っています。
http://www.ets.org/s/toefl/pdf/94227_unlweb.pdf
アメリカ 89点
韓国 84点
台湾 81点
中国 79点
日本 71点
欧米諸国は軒並み90点台です。
アメリカのスコアが少し低いですが、英語が母国語のアメリカ人はTOEFLなんて受験しないでしょうから、アメリカの受験者はヒスパニックやアジア系が多いと推察します。
やはり、日本人の英語力はずば抜けて低いんですね。
ちなみに、アジアで日本よりスコアの低い国はアフガニスタンとタジキスタンだけです。
カンボジアとは同点で、北朝鮮には負けています。
かなり衝撃的な結果かと思います。
上でアメリカの例を挙げたとおり、国によってはTOEFLを受験する母集団が違うので一概には言えません。
しかし、これほどの差が付いているということは、やはりこれが日本人の英語力の無さを如実に表しているのだと思います。
日本人がUSCPA試験に合格する上では、英語力が最もネックになっているということは間違い無いかと思います。
日本人にとってUSCPA試験とは、会計の試験というよりも、英語の試験という方が適切なのかもしれませんね。
以上、日本人の試験結果が悪い理由の考察でした。
まとめ
以上、USCPA試験の合格率について解説してきましたがいかがでしたか?
世間一般に言われているアメリカ人受験生を含む全世界での合格率ではなく、日本人の合格率も考慮に入れた上で、資格としての難易度を判断いただければと思います。
勉強すれば合格できる試験ではありますが、巷で言われているよりは難易度の高い試験なので、油断していると痛い目を見ることになります。
確実に合格できるよう、しっかり試験勉強に取り組んでください。
皆さんが合格を勝ち取られることをお祈りしております。
以下のページについても是非ご覧ください。
>>USCPA(米国公認会計士試験)の難易度はどれくらい?簿記1級との違いは?